環高分子が形成する自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer)
自己組織化単分子膜(SAM)とは、文字通り表面に均一かつ高密度で並んだ単一層の分子が形成する膜です。材料表面の摩擦性、濡れ性、接着性などの特性は、物質表面の僅か数ナノメートルの構造で決定されるため、SAMは表面改質の手法として着目されています。本研究では、分子のトポロジー(かたち)に着目し、環状分子を用いたSAM膜の構築と新奇機能について追求しました。その結果、通常の直鎖状分子が形成するSAMでは、荷重に対し摩擦力が直線的に増加しましたが、今回作製した環状分子のSAMでは、ある一定の荷重で傾きが大きくなるという非線形的な結果となりました(図9)。これは、環状分子が荷重によって可逆的に変形し、摩擦力が大きくなったことを示しています。この現象は、刺激に応答する機能的な表面の構築に応用可能です。このように表面修飾においても環状分子は新奇機能発現の可能性を有しています。
[*Shundo, A.; Hori, K.; Tezuka, Y.; *Yamamoto, T.; *Tanaka, T. Load-Induced Frictional Transition at a Well-Defined Alkane Loop Surface, Langmuir 2017, 33, 2396-2401. Langmuir誌の表紙として採用]

図 9